考え中

まったく公共性のない備忘録

映画

レンブラントは誰の手に

映画『レンブラントは誰の手に』公式サイト 『みんなのアムステルダム国立美術館へ』の監督、オランダのウケ・ホーヘンダイクによる2019年(2021年に日本)の作品。 レンブラントの絵画をめぐり、3つのストーリーが3つ(ぐらいの)レベルで交錯する。芸術…

世界サブカルチャー史 欲望の系譜2

世界サブカルチャー史 欲望の系譜 - NHK 昨年始まったときには知らず、途中から見ている。見逃した回もある。 アメリカの歴史と、主にハリウッド映画に現れる大衆の考えを「欲望」という表現で年代順に考察している。 先週は2000年代に入り、第1回が始まった…

The Secret of Kells

『ブレンダンとケルズの秘密』は2009年制作なのに、日本公開は2017年だとか。それを2022年も暮れになってから見てみた。 典型的な成長物語で、そこに史実としてのケルズの書と、アイルランドならではの森の妖精さんなどが関わる。 映像美は圧巻で、アニメと…

La Famille Bélier/CODA(コーダあいのうた)

フランス・ベルギー映画「La Famille Bélier」(ベリエ一家)、邦題『エール!』のアメリカでのリメイク版がCODA(コーダあいのうた)である。 「エール!」は主人公のポーラ・ベリエが少女から大人になる揺れ動く時代を、家族と自分という対立から描くが、…

Emma.

コロナに紛れて劇場公開されなかったというジェーン・オースティン原作の映画化。邦題は『EMMA エマ』、原題はEmma.である。 軽快な展開で、イギリスのこの当時の難解部分は取り除き、セリフも省いて非常に分かりやすくしてある。 映画化もテレビドラマ化も…

いわさきちひろ〜27歳の旅立ち〜

ドキュメンタリー映画「いわさきちひろ~27歳の旅立ち~」を見た。 絵も人生も独特で、ご主人も独特なので面白い。 やわらかに滲んだ淡い色の絵は、しかし余白とのバランスに優れ、決して独善的ではなく普遍的な世界観を表現している。洋服や髪型がかわいい…

M.C. Escher - Het oneindige zoeken

「エッシャー 視覚の魔術師」という邦題。 M.C. Escher - Het oneindige zoekenはオランダ語とのこと、「MCエッシャー*1、無限の探究」のような意味である。 監督はオランダ、内容は英語とオランダ語インタビューで構成されている。内容は、伝記映画と言える…

Tuntematon mestari (One Last Deal)

邦題:ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像 www.imdb.com ヘルシンキで美術商をしながら生きてきた老人のOne Last Deal(最後の取引き)を描いた映画。 オークション場面、店の店内と店頭での客とのやり取り、娘家族(といっても甥と2人だけ)との…

Armi elää!

2015年公開(日本では2016年)のフィンランド映画で、原題はArmi elää!邦題は『ファブリックの女王』、北欧ブランド「マリメッコ」創業者アルミ・ラティアの伝記的ドラマ映画である。 映画ではあるものの90分弱で、アルミ・ラティアの人生を舞台作…

Clouds of Sils Maria

邦題は『アクトレス 女たちの舞台』。女優を女優が演じる複層的な構成の映画。 英語タイトル「シルス・マリアの雲」、フランスなど地域によっては「Sils Maria」のみがタイトルになっている。シルス・マリアはスイスの地名で、山と泉に囲まれた山岳地帯の景…

A Street Cat Named Bob 2016

www.imdb.com 邦題は『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』という。後半にほのぼの副題をつけられてしまっているが、ネコで釣っている映画ではない。 実話である。本人はカメオ出演するだけで、その役は俳優さんが演じているが、ネコは本猫が演じている。こ…

ガーンジー島の読書会の秘密(2018年)

Michiel Huisman(ミキール・ハースマン)というオランダ出身の俳優さんが「ジュリエット」と発音する甘い響きがなかなか良かった。 主役のジュリエットは、設定では昔から島で暮らしていたかのように馴染んだことになっているが、この映画では浮いているよ…

イエスタデイ(2019)

はじまりは、リアルライフで落ちこぼれ気味の若者たち、あまりにも普通の実家シーンなどダニー・ボイルっぽい設定と、おなじみの疾走感のあるテンポで繰り広げられる。そこに少しコメディ要素が効いている。Google検索シーンとか、実家のご近所さんとか。 後…

ロンドン、人生はじめます

2017年公開の映画。原題はHampsteadで、舞台はHampstead Heathの丘陵地なので、「ロンドン」的なイメージを期待しないほうがいいかもしれない。 美しい茂みを抜けた小川のほとりに立つ掘っ立て小屋にブレンダン・グリーソンが住んでいて、通りを挟んだ瀟洒な…

エセルとアーネスト ふたりの物語

レイモンド・ブリッグスが両親を描いたアニメ作品。1920年代後半から戦時の苦労、住む子の疎開、戦後の生活、老年期、死と、それぞれの時代を淡々とみつめ、繊細に描いた作品だと言える。 ロンドン郊外のウィンブルドンの暮らし、小さな家の様子、二人のキャ…

ビリーブ 未来への大逆転

先ごろ亡くなられた最高裁判事ルース・ギンズバーグの伝記的物語。ロースクール初日から、はじめて理不尽な法律を覆すケースに勝訴するところまで、速いテンポで物語が駆け抜けるので、そんなにうまくは行かないだろうと思いながらも爽快さが残る。 アメリカ…

バベットの晩餐会

アマゾン・プライムにデジタル・リマスター版が出た。最初の公開は1987年だったらしい。そんなに前だったか。当時、映画を見たあとに読んだディネ―センの原作と呼ばれる物語は短く、映画版の表現力の高さが際立つ。 芸術という形の喜び、生まれ持った力…

英国総督 最後の家

インド・パキスタンの分離独立の経緯をマウントバッテン卿の視点で描いた史実に立脚する映画。マウントバッテン卿をヒュー・ボネヴィル、妻エドウィナをジリアン・アンダーソンが演じている。 グリンダ・チャーダ監督は『ベッカムに恋して』しか見ていないけ…

ダンシング・ベートーヴェン

フランス映画っぽさに負けずに見る。 第九をズービン・メータ指揮で、オーケストラ、合唱、そしてそこにモーリス・ベジャール・バレエ団のバレエを載せて公演するというプロジェクトを追ったドキュメンタリー。 Kateryna Shalkinaというウクライナ出身のダン…

希望のかなた Toivon tuolla puolen(2017年)他

今年は、見た映画の記録を残そうと思っていたけれど、結局できていない。思い出せるのだけ記録しておく。 「希望のかなた」 Toivon tuolla puolen(2017年)を見た。いつ見たかは忘れた。ル・アーブルの靴磨きの続きのようで続きでない。以前のカウリスマキ…

The Hours(2002)

ニコール・キッドマンの特殊メイクが話題になった映画。邦題は「めぐりあう時間たち」。ヴァージニア・ウルフのダロウェイ夫人にヴァージニア・ウルフの伝記を絡めた翻案映画化。 女優がみんなすごい。日常に潜む虚しさを表現する、その演技に目を奪われる。…

Any Day Now (2012)

邦題どうしようかってなるのは分かるけれど、他になかったのか「チョコレートドーナツ」。劇中Alan Cummingが歌うボブ・ディランの”I Shall Be Released”の歌詞のサビがAny day nowで、解放される日がおそすぎること、今の状態が不当であることを歌っている…

Sing Street

未来が見えなくて新天地へ自由な旅立ちをするお話はたくさんあって、どれも悲しい。80年代のダブリンは先行き不透明で、家庭も学校も大人も危うい。それなのにパワーだけのために理不尽に校則「黒い靴」を強要する。I fought the law and the law won♫という…

ムーンライズ・キングダム

少し前に挫折して、もう一回頑張って見てみたウェス・アンダーソンの2012年公開映画。色っぽい少女と喫煙する少年が、大人社会から脱走して駆け落ちする話だが、途中の展開が特にないので30分ぐらいの短編として作ったほうがいい感じだったかもしれな…

マダム・フローレンス! 夢見るふたり Florence Foster Jenkins

ソプラノ歌手としてカーネギーホールで歌うというFlorenceの奔放な夢をプラトニックな愛で支える舞台役者のSt. Clairの話。 メリル・ストリープが本気のオペラ歌手役で魅せるのはもちろん、St. Clair役のヒュー・グラントが浅いのか深いのか分からない変な人…

キャロル

2014年公開。ケイト・ブランシェットとルーニー・マラがかわいい映画。ケイトはもうファンタジーにしか見えない。 アメリカ、ニューヨーク、50年代。新しい価値観が生まれようとする時代。 保守的な富裕層の奥様であるキャロルはゴージャスなファーコートを…

時代屋の女房

BSでやっていた80年代の日本映画をなんとなく見た。夏目雅子主演で沖田浩之も出ている。渡瀬恒彦、津川雅彦、朝丘雪路と、ここ数年で、2000年以前に活躍したスターは次々他界して、この映画に流れる価値観も古い。 原作は82年、直木賞受賞作の映画化である。…

ツレがうつになりまして。

最近病気の実話の映画ばかり見ているが、堺雅人の演技が素晴らしいので最後までしっかり見た。 タッチは軽いけれど内容は深刻なのでよけいに悲しくなる前半と、そんなに収束するものだろうかとしらける後半という内容だった。 淡々と描かれるほのぼのとした…

LA LA LAND

2年前に見たい見たいと思っていたけれど、結局今頃初めて見た。おしゃれな映画だし、結末もピリッとからい。 賛否両論あるのは頷ける。スターに憧れ、オーディションを受けまくり、才能がないと諦めかけたときに力をくれた彼とは今はもう… 話の筋だけ聞くと…

Still Alice

若年性アルツハイマーが発症した将来有望な大学教授をジュリアン・ムーアが演じている。『アリスのままで』の邦題でその意味が分からないけれど、英語タイトルは、自分が自分ではなくなる、自分であると自覚できないようになることを表そうとしたタイトルだ…