考え中

まったく公共性のない備忘録

マダム・フローレンス! 夢見るふたり Florence Foster Jenkins

ソプラノ歌手としてカーネギーホールで歌うというFlorenceの奔放な夢をプラトニックな愛で支える舞台役者のSt. Clairの話。

メリル・ストリープが本気のオペラ歌手役で魅せるのはもちろん、St. Clair役のヒュー・グラントが浅いのか深いのか分からない変な人を好演していて、2人の演技が見どころの映画。

不治の病、親の遺産、自由奔放さといういかにもアメリカンなFlorenceに加え、なぜそこまで尽くすのか謎すぎるNYのイギリス人St.Clair。それが実在のカップルだったというが、初婚でもなく夫婦関係というのでもない。Florenceは梅毒を患っているのでSt.Clairは愛人のもとで夜をすごし、昼間はFlorenceに尽くす。映画ではFlorenceをmy wifeと呼んで、深い愛が献身的な支援の根底にあるように描いているが、実際にはマネージャーといった立ち位置だ。なんとなく、お金とまやかしの匂いも否定しきれない中に、それでも何かきらっと真実がある、それをヒュー・グラントならではの軽さがうまく醸し出している。

真剣なのにコミカル、それがマダム・フローレンスの人生だというなら、こういう形での映画化も正解なのかもしれない。