考え中

まったく公共性のない備忘録

Oguissの差し色

稲沢市荻須記念美術館に初めて行った。

車で30kmほどなのに、これまで行ったことがなかった。1983年に開館したそうなので、40年も前だ。30年ほど前に国府宮神社のはだか祭には行ったけれど、それ以外に稲沢というところにあまり行ったことがない。

行ってみると記念美術館の素敵な建物は稲沢公園の中にあって、とてもいいところだった。

 

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現在、特別展 生誕120年記念 荻須高徳展 -私のパリ、パリの私-を開催中。

あの油絵の具で壁の質感を作り込んだパリの街角、厚い雲に覆われた空、葉っぱが落ちた冬の並木道の黒い木の枝などが巧みな構成で描きこまれた作品は、過去に何度も展覧会で見ているので、特別展と言っても無理に行こうとは思っていなかった。

ところが入室から3作品目ぐらい、暗い背景の中に原色が現れる肖像画を見て新たな観点を得た。戦前の最初のパリ滞在のとき、荻須がシャルルというパリの友人に伴われてベルギー旅行をしたときに現地でフォービズムの影響を受けたという解説があった。

見慣れたパリの街の絵は、確かに厚い壁や薄暗い空や黒い並木で冬めいているのだけれど、荻須は、特に戦前の作品には、必ずどこかに差し色を入れているのだ。それもトリコロールのように、青と赤が白い壁の街に少しだけ鮮やかに効いている。郵便ポストの赤だったり、川に浮く小舟の青だったり、何もないときは、まさにフランス国旗が風に絡まり、青と白と赤の彩りを添えている。黄色や緑も必要な分量で鮮やかに盛り込まれる。

 

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これまで、筆のタッチに気を取られていて、あの安定感と安らぎを保証する色のバランスには気がついていなかったなあと、改めてOguissの配色を見る機会になった。