宗次ホールに1843年製のプレイエルを運び入れての演奏会。
装飾的な楽譜立てと側面の飾りが愛らしい飴色のプレイエルは、その当初の持ち主まで特定することができたとの報告があって、当時そのプレイエルで演奏されたかもしれない楽曲を、無機質な黒のスーツ姿の川口さんが演奏する。
プレイエルが主役っぽい。
10月にアントワープやフィレンツェで演奏をしてきたとかで、ティネル、フィリップ・ファンデン・ベルへなど、ぜんぜん知らなかった18世紀~19世紀の楽曲を、メンデルスゾーン、リスト、チャイコフスキーなどではさみながら、最後はピリオドピアノコンクールのショパン協奏曲で締めくくる。
川口成彦 フォルテピアノ・リサイタル ~愛の歌~
2023年 11/26 (日) 14:00
メンデルスゾーン:無言歌 op.38-6
シューマン:献呈 S.566/R.253(リスト編曲)
アルカン:《歌曲集 op.38 第1巻》より 第6番「舟歌」、第1番
《歌曲集 op.38 第2巻》より 第2番「ファ」
《全ての長調による12の練習曲集 op.35》より 第10番「愛の歌-死の歌」リスト:ナポリのカンツォーネ S.248、愛の夢 第3番 S.541-3
ティネル:歌 op.7-2
ベルへ:ピエ=ララ(17世紀フランダースの大衆歌による幻想曲)
アルベニス:愛の歌 op.101-3
チャイコフスキー:哀歌 op.72-14
ショパン:スケルツォ 第1番 op.20(ポーランドのクリスマスキャロル)
ピアノ協奏曲 第1番 op.11より 第2楽章(バラキレフ編曲)使用楽器:プレイエル 1843年
協力:タカギクラヴィア株式会社
アンコール曲:マサルナウ:ティラーナ
演奏者によるプログラムノートがついていて、【愛】にまつわる選曲の意図や曲の背景などを紹介してくれている。合間に口頭でも、「ファンデン・ベルへという人はフランダースの作曲家でもない一般人で、いまでは現地でも演奏されないような曲だけれど、このピエ=ララな素晴らしい曲で」などと説明を入れてくれた。CD音源(Spotify)では聞いているのだが、今日の演奏はこの曲と、ショパンのスケルツォだけ、ちょっと音が響きすぎて聞き取りにくくて残念だった。他は抑えめの音量で、ほんとにサロンで聞いているようなくつろぎと興奮の気分だった。
本来は仕事で諦めていたところ、突然キャンセルになったので、昨日の電話で押さえたチケットだったが、満足ないい席が取れたし、終始快い演奏会だった。