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まったく公共性のない備忘録

The Secret of Kells

『ブレンダンとケルズの秘密』は2009年制作なのに、日本公開は2017年だとか。それを2022年も暮れになってから見てみた。

 

典型的な成長物語で、そこに史実としてのケルズの書と、アイルランドならではの森の妖精さんなどが関わる。

映像美は圧巻で、アニメとしての完成度がすばらしい。

 

舞台はアイルランド、9世紀というのでケルト化していた地がさらにキリスト教化している状態で、ちょうどバイキングの襲来が深刻になってきた頃である。9世紀の初頭に、アイルランドのケルズ修道院で技巧的で豪華な装飾を施したケルズの書が完成する。

 

物語は、そのケルズ修道院にバイキングの襲来を逃れた偉い僧侶エイダンが訪れてくるところから始まる。年老いたエイダンが隠し持っている本にはこの世の知恵と不思議な力が秘められている。別の修道院で作り始められたこの本は未完成で、緻密な装飾のための技術や特殊なインクの入手は困難である。僧侶エイダンにうまいこと導かれ(そそのかされ)ながら、いたずらっ子のブレンダンは本を完成させることに次第に夢中になっていく。

 

まず、インクに必要な木の実を探して魔法の森へ出かけるが、そこで森の妖精アシュリンと出会う。最初は人間に懐疑的だったアシュリンとの信頼関係が徐々にできる。これはエイダンの目論見以上の結果を生む。この映画の見どころとして、この二人の関係はケルズの書の完成よりも尊いんじゃないかな。

 

ケルズの書はキリスト教福音書でありながらケルト文化を反映した装飾がなされている。アシュリンは森の妖精で、外から来た新しい人間たちを信用していない。ブレンダンは修道院の子である。この2人が出会い、言葉ではなく行動で信頼しあい、後にアシュリンがブレンダンのために消えてしまうことに意味があるのかしら?などと考える。

 

アシュリンが一種の昇華?を遂げ、書物は完成し、世界は救われるわけだが、少年だったブレンダンの成長と、それを認める修道院長の関係が最後に描かれて映画は終わる。