東京都美術館へ、というか東京へ、久しぶりに行った。
今回は埼玉の小京都川越と、東京駅が予定に入っていたけれど、上野は急遽の予定変更で行った。前の夜のうちにオンラインチケットを購入した。最近の人気展覧会は時間指定で入場制限をしている。朝一番の9時半のチケットを押さえた。
上野駅から公園の方へ出ると、もう桜がチラホラ咲き始めている。西洋美術館を横目に奥へ進むと、9時過ぎなのに動物園にすでに人が並び始めている。目的地の東京都美術館にも人の列ができている。
上野東照宮にお参りしてから、展覧会の列に並んだ。
チケットをこれから買う人も、すでに持っている人も、同じ列に並んでくださいということだった。5分早めの9時25分に門が開いて、地下の受付へ向かって1列になって入場した。
ロッカーに荷物を入れて、三次元コードで入場すると、さっそくシーレの写真や若い頃の作品が展示されている。豊田市美術館所蔵のシーレの叔父さんのポートレートもここにあった。
今回はシーレ展とは言ってもレオポルト美術館から来ているものが多く、クリムト、カール・モル、アルビン・エッガー=リンツ、コロマン・モーザー、ゲルストル、ココシュカなどが来ていた(ゲルストルが来るのは最初で最後かもしれない)。
ウィーン分離派や表現主義のそういう作品に混ざってシーレも分離派時代、表現主義時代、風景画、結婚後の時期と、作風別にそれぞれ分かれて展示されている。
群を抜く上手さは言うまでもないが、分離派から表現主義へ時代の求めるものを表現する才能に恵まれた人なんだろう。カラフルな輪郭線と、陰影だけの肉体、色や形より質を重視した背景、そこに角印のようなサインが差し込まれて、おしゃれさがある。計算しつくされた画面構成は、不安がギリギリの均衡を保つような切迫感もある。
若い人に刺さるだろうなと思いながら見た。
風に抗って耐える「冬の木」が来ていた。見たかったやつだ。
曇りっぽい背景にぶどうの木のしなやかな枝が曲がるのだけれど、そのバランスの良さはなんとも言えない。風の中の木の枝でもあり、血管のような張り巡らされた網の向こうに細胞が並んでいるようにも見える。
もっと大混雑を予想していたので、思ったよりはゆっくり楽しむことができた。
9時半に列を見たときは少し身構えたけれど、11時頃に展示室から出たら、その比ではない長い列が外まで続いていたので、朝一番に行くのがやはりよいのかもしれない。