大正15年の民藝運動に関心があって、河井寛次郎展を見に愛知県陶磁美術館へ。瀬戸が近い長久手の奥の方で、ひっそりと展示している。今回の展示は京都国立美術館所蔵品でありで、愛知トリエンナーレの一環の特別展でもある(別件でちょっとした話題の)。
来るのは2回め、以前来たときは人生に嫌気が差した30代のある日だったか、所蔵品には心動かされものの、優れない気分で歩いた覚えがある。今日来てみたら、所蔵品は相変わらず素晴らしく、キュレーションもなかなか良く、しかし経営はいまいちな美術館だった。
河井寛次郎は新しい表現のために新しい技術にどんどん取り組み、時代の空気や20世紀初頭の美術界の影響を受けながら、作品を変転させていった。それが時系列で見られる。色や艶を出す技術もすばらしく、形も面白いもの、伝統や古典を再解釈したものなど、それぞれおもしろかった。
背景にある民藝運動は、ロマン主義期のイギリスの詩人ウィリアム・ブレイクに影響を受けた柳宗悦や、バーナード・リーチを通してウィリアム・モリスの生活文化向上の思想に影響を受けた濱田庄司などが、日本の民芸品に芸術品以上の美が宿ることを周知して広める運動で、懐古的ではなくモダンな手作りの技評価といえる。イギリスで言うアーツ・アンド・クラフツ運動的なものだけれど、日本では西洋化する社会で無価値なものと打ち捨てられがちな生活道具の再評価という側面もあった。
本館を出て南館の袖あたりには、狛犬館があって、黄瀬戸の狛犬など陶磁器の狛犬が展示されている。室町、江戸あたりの貴重な阿吽たち。
この地域の陶磁器の歴史をひもとく南館もチラ見して、帰宅。
この美術館にはミュージアムショップがないけれど、陶磁器や狛犬のミニチュアを売ればイチコロ消費者が多いはずだがなあ。
しかも、今ちょっとホットな谷口吉生のお父さんの谷口吉郎による設計。中庭から眺めると、本館と左翼とが芝生を広々と囲み、水路を配したときめき建造物である。館内は昭和50年代の雰囲気を残し、2階と地下に展示室を持つ。
作陶教室もあるし、登り窯も見学できる。