考え中

まったく公共性のない備忘録

オーケストラ・アンサンブル金沢

オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の定期地方演奏会に行った。技巧派トランペット演奏者であるセルゲイ・ナカリャコフを交え、トランペット協奏曲を挟んだプログラムで、満席に近い盛況ぶりだった*1

 

トランペットの音色のまろやかさと、OEKのなんとも言えない文化的な香り、プログラムの選曲と、すべて堪能した。座席が前から4列目だったので、オケ内のちょっとしたやり取りや、細かな動きも見ることができた。ただし管楽器が隠れて見えない位置ではあった。生ナカリャコフの奏法はもう人間じゃない何かだった。楽器も素敵だった。

 

指揮は常任の川瀬賢太郎氏、客席には同じく指揮者の松井慶太氏も来場していた。サン=サーンスの『死の舞踏』から、トランペット協奏曲、奏者アンコール曲『G線上のアリア』、能登沖の地震と豪雨被害の災害募金の依頼と休憩をはさんでブラームス、最後に『カンタベリー・コラール』と、慰め鎮めるような終わり方だった。

 

演奏曲目
サン=サーンス    交響詩「死の舞踏」作品40
アルチュニアン    トランペット協奏曲
ブラームス    交響曲 第2番 ニ長調 作品73

 

弦楽器の充実したオーケストラで、管楽器用に作曲されたアンコール曲も弦楽器バージョンだった。特にサン=サーンスのヴァイオリンソロを務めたコンサートマスターの演奏が、ソロでありながらオーケストラと馴染みがよく、ブラームスのチェロの出だしも同様に、際立ちつつも馴染むという一体感がよかった。『死の舞踏』の調弦は、バイオリン持ち替えで演奏していた。

 

トランペットはトランペットの概念が変わるほどの甘美な音色で、全力の半分ぐらいに見える軽やかさ&なめらかだった。ミュートを装着する箇所もあって、独特のビヨ~ンとした音を想像していたのに、細く流れ出る湧き水のような音が出てきて、聴く方もため息が細く湧き出した。アンコール曲はフリューゲルホルンでG線上のアリアを演奏したが、トランペットよりは管が長いので少し力を入れている様子には見えたものの、深みが増して、楽曲を豊かなものにしていた。楽器の見た目もよかった。

 

OEKは復興応援コンサートで巡業に入っているようで、日本各地のお近くのホールに現れるようなので、日程が合えばおすすめしたい。いいオーケストラである。

*1:ただし男女比は半々、先日のマリン・オルソップ+角野さんのときの女性トイレの混雑ぶりが嘘のように静かだった笑