スマホが広く流通する前、人々がコンパクトデジタルカメラ(コンデジ)を持ち歩いていた時代がある。
フィルムカメラに比べると格段に軽く、フィルムを買う必要はなく、そもそも現像もしなくていいと、いいことづくめと感じていた。
今思えば、メモリが別になっていて、そこからデータをPCに移すのにわざわざ有線でつないだり、パソコンにソフトを入れたり、画像も今思うと画素数を詰め込めなかったり、バッテリーも持たなかったりと、それほど良いものではない。
そんな時代が21世紀初頭にあったわけだ。
90年代に使っていたフィルムカメラ、2000年代のはじめに初めて買った初代コンデジ、よりコンパクトになった2台目のコンデジ、それらのうちのどれの付属機器が分からない小さな接続機器などが箱の中から出てきた。初代で撮影した画像を暑中見舞いにプリントしたそのプリンターやパソコンなんかはとっくに処分した。そういう暑中見舞いを出し合うのもその頃が最期の時期だった。画質はスマホがすぐに追い抜いて、2010年を過ぎるとコンデジとスマホを両方持ち歩くのは無駄になった。
一気に処分しようと思いつつ眺めている。来週には、自治体の小型家電リサイクルの箱にそっと入れて、そういう時代なんてなかったことにするのだろう。もともと、モノには執着しない性分の私にはめずらしいことだが、ひととき、弱弱しい感情に走っている。