考え中

まったく公共性のない備忘録

ことば、身体、学び「できるようになる」とはどういうことか

4冊同時に読み進めているうちの2冊め、今日読み終えた。

元オリンピック陸上選手の為末大言語心理学者の今井むつみによる対談である。

https://www.fusosha.co.jp/books/detail/9784594095796

 

 

 

身体を使えるようにするとはどういうことか、言語が果たす効果や言語技術はいかに身体化されるべきなのか。人間の認知についての研究の今後とその応用を見通せるような内容だった。

 

その環境において、自らの身体を、最適で最高の動きを目指して調整していくことと、その意識化(反省的な意識)、その維持、そして修正すること、それぞれの段階で既習得の技にとらわれないこと、その難しさなどを語り合っている。

 

さらに全体に「記号接地問題」という観点が貫かれている。

記号の接地とは、記号が身体化されることで、生きたコミュニケーションには必須である。人工知能(AI)では、記号がまるで接地しているかのように処理されるが、実際には身体を持たないため身体や経験に接地はしない。

スポーツの指導において、他者の認知と身体の使い方とを自分のそれと同様に導くときに、言語が音や形として伝わり、それがAIのように表層的に処理されるのではなく、「接地(グラウンディング)」、つまり、記号である言語への理解が身体性を伴う必要がある。

スポーツに限らない。学校教育も記号接地を意識したカリキュラムであるべきだ。

 

今井むつみ氏は、オノマトペ研究者の秋田喜実氏との共著『言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか』 でも、言語のアイコン性から身体と言語に迫っている。

www.chuko.co.jp

 

専門書もある。

岩波講座 コミュニケーションの認知科学 1
言語と身体性