考え中

まったく公共性のない備忘録

キュビズム展

先月、国立西洋美術館で始まった「パリ ポンピドゥーセンター キュビズム展―日の革命」に行ってきた。

cubisme.exhn.jp

 

例によって、チケットをオンラインで事前に購入しておいたが、日時指定もないところから「キュビズム」の日本での人気度がしのばれる。そんなことをいう私も、もちろんそこまでキュビズムには理解が及んでいなかった。

しかしポンピドゥーセンター(正確にはポンピドゥー複合センター内の国立近代美術館・産業創造センター)のコレクションがすごいことは知っているし、1977年に開設されたこのセンターが修復とアップグレードで5年間も休館することを知り、その機会になかなか見ることができない作品がまとまって来日することも分かり、「ぜひ見たい」ということになった。

さらに、事前に予習できる動画が興味深く、「ぜひ見たい」となった。今回の国立西洋美術館での展覧会公式サイト(上のリンク)には、キュビズムとはなにか、今回来日する作品はどのようなものか、を2本の動画で紹介するYou Tubeサイトが貼り付けられている。もともとYou Tubeでいろいろな美術関連話を紹介しているチャンネルとのコラボ動画である。

 

 

上野駅の上部ルーバー、秋晴れの上野公園、西洋美術館の緑がかった外観やロダンの彫刻、すべて美しく爽快だ。

 

入場はそれほど手間取らず、ロッカーから会場への案内もスムーズで、すぐにキュビズムの革命という今回の展覧会の趣旨をボードにした写真スポットまでたどり着いた。

20世紀絵画の始まり、変革のきっかけのひとつとなったキュビズムという動きについて、じっくり体験的に知ることができる。140点を、変容の段階で区切って見ていける。ここでは、おおまかに前半、後半、終わりの部分に分けて書く。

 

前半は、ピカソ、ブラックを中心に、洗濯船(モンマルトル)で起こった動きである。セザンヌの取り組みに啓発を受けた初期段階、アフリカ彫刻などプリミティブアートの影響(アンリ・ルソーいいねの動きもここに含まれるか)という側面、ダイヤモンドカットが複雑になるように、面での切り取り方も進化する段階と、順を追って見ていける。ローランサンアポリネールの活躍も見逃せない。

 

後半は(会場では前後よりもう少し細分化されている)、蜂の巣(モンパルナス)での動きが分かるようになっている。

展示はデュシャン3兄弟に始まり、シャガールモディリアーニなどエコール・ド・パリの画家たちのキュビズム時代も展示されている。デュシャンブランクーシなど、彫刻作品も来ている。

 

さらに、国立西洋美術館の設計者であるル・コルビジェの絵画作品が展示され、コルビジェ風の四角くてモダンな建築物において、どのような絵をかけるのが向いているのかといった、絵画のための絵画という動きではなく、その住環境との関わりに及ぶ動きであったことが示唆されていく。

 

一番印象深かったのは、サイズ的にも大作で、今回のチラシにも採用されたロベール・ドローネーの《パリ市》であった。描かれているのは、古代の三美神であるところの女性3人、現代のエッフェル塔、そしてアンリ・ルソーの引用などである。色合いがおしゃれで気持ちよく、コラージュ的な部分もあるけれど、色紙を敷き詰めたような手法の一貫性と、三美神を主役に取り立てた配置で、良いバランスとまとまりがある。

 

レストラン|国立西洋美術館

 

館内の「カフェ すいれん」に初めて並ばずに入ることができた。

中庭を見ながら食事ができるように、テーブルや椅子が配置されている。

 

「すいれん」は松方コレクションのモネから取ったと思うが、食事の後、「上野の森美術館」のモネ展を挟んで、再度、国立西洋美術館に戻って常設展も見た。その様子は、また違うエントリーで。