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まったく公共性のない備忘録

老眼鏡を持ち込めばよかった「ムーミンコミックス展」

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名古屋市博物館はここのところ、ちょいちょいスヌーピー展やゲーセン展のような評価が始まったばかりの近い過去の文化を選んでくる。

ちょうど映画「トーベ」も始まり、ムーミンのコミックやアニメ作品も繰り返し売り出されている日本で受容されているムーミン像というのが一方にあり、それとは異なるものが見られるかもしれないと思って「ムーミン・コミックス展」に行ってみた。

トーベ・ヤンソンが1940年代に始めたフィンランドの小さな架空のコミュニティの暮らしの物語は、1954年からロンドンの新聞London Evening Newsで3~4コマの漫画として連載されるようになるが、連載は途中で弟のラルスとの共同制作となり、その後ラルスに引き継がれる。今回のコミックス展では、キャラクター設定や主要なメンバーが徐々に固まり、架空の谷の暮らしのお話からイギリスの見ていた世界を反映したコミックになるまでの推移を見ることができる。

生み出されるキャラクターは、半妖というかファンタジーと言うかで、お話も社会を反映した子ども作品とも言えないものだったようだ。キャラクターもさることながら、来ている服(コスチューム?)や建物の外観、内装の妙などがかなり楽しめる。そういう部分だけ鑑賞するというのでもいいのかもしれない。

鉛筆で細かく書かれたコミックの原画のセリフは英語なのだが、老眼には読めず、しかしストーリーやセリフが分かってこその絵画表現だろうから、絵だけ見ても半分しか楽しめない。しかも展示物が上下2段になっていて、下の方はかがんで見なければ見えず(子供の身長に合わせたのか?)、途中から疲労感に襲われた。

展示は後半になって原画ではなく版画が拡大されたものになり、突然漫画として読めるようになる。そうすると漫画作品として楽しむためにじっくり読んでしまうが、そういう読み方をしない鑑賞者もいるので、鑑賞のペースが難しい。

さらに展示最後の方では漫画の横に解説として日本語のあらすじが現れる。最初からあらすじがあってもよかったのではないか。

掲載されていたのが新聞、しかも都市部の夕刊の紙上ということもあり、戦後から70年代のイギリスの世界観が反映され、007かムーミンかといった風情だった。戦争の影響や世界に向かう冒険のストーリーは、弟のラルスの創作の特徴かもしれない。

そんなわけで、芸術面、時代背景、ヘルシンキやロンドンという土地柄や文化、コミックの歴史や表現の発展など、多角的に鑑賞することが求められる展覧会で、結果へとへとになった。

 

 

常設展

博物館の常設展を久しぶりに見たが、以前に比べるとかなり充実していて、しかもわかりやすく整理されていた。尾張を中心に縄文の出土品から始まり、様々な時代の建造物や人物像、合戦図、刀、文化文物を昭和の初期電化製品ぐらいまで展示している。