浜松駅前の楽器博物館は、楽器を通して人類を感じる素晴らしい施設である。
人間社会とか、人と音楽のこと、楽器を作る技術や素材、儀式性、社会における音楽の位置づけなど、いろんなことを考えるきっかけになる。
どの楽器も、大事に伝えられれていて、それぞれ個性的だけれど形や型がその文化に定着している。
装飾のすばらしい楽器は作り手の誇りを感じるし、そういう装飾が祭祀の重要性を物語る。奏者のコスチュームも決まっている文化もある。
笛の類は、長いの、細いの、小さいの、擬人的なのなど、形はいろいろだが、棒に穴が空いているというのが基本で、木管、金管、たまに動物や鳥の骨という素材がある。
下の段左から2枚目、コンドルの骨のケーナ(左、黒っぽいの)、鹿の骨のケーナ(右、白くて太い)でいずれもペルー。
下の段の右2枚は、前回のブログエントリーで書いた馬頭琴の装飾。あひるがかわいい。
ハープのような指で爪弾く系統の楽器、弦を弓で摩擦する系の楽器などは、木材やメタルで骨組みが作られ、表面に皮革が使われるケースが多い。
鍵盤楽器は別の部屋に集められて展示されている。
「ヴァージナル」(左端↓)って単語はフェルメールの「ヴァージナルの前に座る女」で覚えた楽器名である。だから「これが、ヴァージナルか」と思いながら見る。
鍵盤の部屋ではないけれど、ブリューゲルの絵に登場するバグパイプなども、絵(写真)と楽器が合わせて展示されている(右2枚↓)。
ちょうど、楽しみにしている「美術展ナビ」のサイトの中野京子さんの連載エッセイにつながる。
展示は、ガラスケースなどには入っていなくて、直に見ることができるが、貴重なものなので触れてはいけない。学芸員さんも白手袋で扱っている。
楽器なので、どうしても「鳴らしてみたい」という衝動を抑えきれない。
そういう人もいるだろうということで、映像やヘッドフォンの設置による音の展示も充実している。
とはいっても、やはり自分で鳴らしたい、あるいは上手な人が演奏しているのを聞きたいという純粋な願いもある。
それに応えて、日曜には必ず、演奏会やワークショップ的なものが開催されているそうだ。平日にもギャラリートークが毎日数回どこかで行われているという。また、楽器体験室もあって、そこには弾いてもOKな懐かしいオルガンや電子ピアノ、打楽器などもある。
少しづつ楽器数を増やしながら、来訪者の期待に応える形を作ってきたと思われる博物館だった。満足した。