楽しみにしていたパウル・クレー展に行ってきた。愛知県美術館である。
平日チケットというものがあることに気がついたが、すでに前売り券を買ってしまっていた。チケット売り場の人、教えてくれないからな。
さて、クレーは2007年、2008年あたりにクレー展としても、シュルレアリズム展の展示としても何度も見ている。ミュンヘンのレンバッハ美術館でも見た。
それにもかかわらず、今日始めて見たような気がする。
時代や、所属するグループ(派閥)、スタイルごとに展示区分(チャプター)があって整理されていたからかもしれない。
それぞれの活動期のクレーの環境や、交流のあった作家作品との関係でクレーを見つめるという大きな主題のある展覧会だった。そうした作品背後の関連性が「星座」という展覧会タイトルになっているそうだ。協力はスイスのパウル・クレー・センターなので、当時の展示情報や雑誌、その他資料も豊富に展示されていた。
https://www-art.aac.pref.aichi.jp/exhibition/item/PaulKlee_list.pdf
1.詩と絵画
青騎士以前の初期作品で、クレーの作品と、ゴヤ、カンディンスキーなどとが半々ぐらいだった。エッチングの「老いたる不死鳥」を見ると、アルブレヒト・デューラーすら想起させるタッチだけれど、すでに再構成のような造形が見られる。表現主義の頃のエゴン・シーレなんかも思い出した。
2.色彩の発見
チュニジア旅行の影響が色濃い時期で、色彩に目覚めたことが解説されていた。ピカソやブラックとともに展示されている。キュビズムの時代なので、面を展開したような画風だが、色も切り貼りによって再構成する。
クレーも面白いが、ロバート・ドローネーがそれっぽくていいし、アウグスト・マッケのロバの作品〈男とロバ〉が秀逸だった。

↑図録から抜粋しちゃったが、チュニジア風なのはもちろんのこと、ロバの特徴もいいし、ロバの背中辺りが背景と溶け合っているのがいい。男の配置や角度が画面の色割合や分割の効果を高めているし、木のような中央を左右に分断する太い線がまた良い。配置も配色も画面構成も何もかもいい。
クレーはこれらこのあたりの交流の影響をかなり受けていると感じた。
3.破壊と希望
戦争の影響が強い時期である。破壊と希望というこのチャプターのタイトルは、クレー本人の生活基盤の破壊と再生のことであるが、作品を切断して再構成したことも表している。キュビズムという大きな動きと、それへのクレーの関わり具合も分かる。
4.シュルレアリスム
クレーはシュルレアリスム宣言に参加したので、この時期の作品は一応そういうことになっているが、展示の点数は少なかった。そういう運動なので、雑誌の展示などがけっこうあった。
その他の作家作品、前半はマックス・エルンスト、デ・キリコなど、後半はマックス・エルンストやハンス・アルプのブロンズを展示していたので見応えがあった。
5.バウハウス
バウハウスのクレーは、それまでの造形の試みが花開くような時期で、ほんとうに良い。コンポジションである。構成主義である。遠くから見ても近くで見ても、それぞれ良い。
チケットデザインがこの時期の作品である。

マス目はその後も発展していくし、波及していった。
横線(勝手に「補助線」と思っていた)が引かれた作品がけっこうあるが、〈女の館〉という作品では五線に音符という意味があると解説されていた。横線の機能はいろいろあるに違いない。
この時期に、音楽の絵画化も試行する。カンディンスキーのほうが有名だけれど、クレーはバイオリン弾きなので音楽の視覚化がマニアックである。単純な音楽のイメージではなく、楽曲の構成や重なりや時間に伴う変化、そして同じ主題の繰り返しなどが現れている。
バウハウスで収入が安定して平和な時期である。
その後ナチスに追われる格好で、バウハウスが終わり、クレーもスイスに亡命する。
6.新たな始まり
抽象化が極まってくる。抽象性がプリミティブに見えるものもあって、コブラ(ベルギーやオランダで起こったプリミティブ・アートやフォーク・アートの運動グループ)に先立ってその傾向を感じさせる。モチーフの断片が離散して画面に広がる作品はミロのような離散性も想起させる。初期の版画からずいぶん遠くへ来た。
線の動きと色の相互作用、軸と回転など、ダイナミズムとリズムのようなものを感じる作品もある。植物の形状の回転を意識しているものもある。音楽的なリズムと主題の繰り返しと主旋律の造形のような作品もある。
書ききれないけれど、パウル・クレーの思想面や造形に対する持論のようなものなどを一貫して感じる展覧会だった。
<大事なおまけ>
コレクション展の方に「マックス・クリンガーの芸術-連作版画を中心に-」の部屋がある。必見である。