
「生誕140周年 藤田嗣治 7つの情熱」に行った。
これまで、乳白色とか猫とか毛筆とか、そのぐらいしか知らなかった藤田嗣治の解像度が上がった。意外な作品もあって、良い展覧会だった。
生誕140周年記念サイトができていて、2種類の巡回展と、いくつか企画展があることが分かる。今年はあちこちで大々的にやるようだ。
巡回展のうち「藤田嗣治 絵画と写真」というのは我が地域にも巡回してくるが、「7つの情熱」展は巡回してこない。
ということで、SONPO美術館で開催中の展覧会に行った。新宿が苦手なので久しぶりである。それでも過去の記憶とスマホの地図を頼りに新宿西口から出て雨の中を歩くと、思ったより近かった。
5階から都内の景色がきれいに見渡せるはずだが、雨なのでそのことはすっかり忘れて鑑賞スタート。すっかり国際的な街になった新宿、フジタの人気なのか、美術館もインターナショナルになっていて、鑑賞のときにもちょっと勝手が違う。
「7つの情熱」という展覧会タイトルは、「自己表現」「風景」「前衛」「東方と西方」「女性」「子ども」「天国と天使」という7つの想像源を指すということだった。展示はその順序で展開する。
自画像がいくつか続き、その後人物画を描くまでは、風景画がたくさんあった。前衛というのは、たぶんピカソやルソーの影響を受けたキュビズムっぽい時代を指すのだろう。
やがて西洋でも東洋でもない独自の画風を切り拓いていく。パリでの交流なども深まり、女性を中心に人物を描くようになり、肌のあの独特の色使いが始まる。乳白色と言われるが、形容詞難い色である。
宗教画もあって、母子や天使の配置に気をつけながらたくさん書いている。大型の宗教画はルールがあるのでややぎこちなく感じるが、肖像画的なやつはもともとの技術が映えている。
大戦で、国を移動しながらの時期を経て、すっかり独自の作風を切り拓いた後だとは思うが、まだまだ新たな試みをしている。イラストや挿絵的なものがある。子どもをたくさん描いている。すばらしいデッサン、緊張感のある構図、可愛いモチーフ(子どもや燕や)、色使い、何もかもがよくできていた。
情熱のある画家だった。
これまで、そういう見方をしたことはなかった。色使いはセピア系だし、前髪はぱっつんだし、ちょっと斜め上の冷静な印象を持っていた。
藤田の展示が終わり下のフロアに移動する。展覧会の一部として巡回している関連作品が出ていた。
SONPO美術館の所蔵品が最後に展示されている。旧美術館名にもなっていた東郷青児が何点か、そして最後に例の「ひまわり」があるが、特別室を作られていた。
雨がますます強くなり、駅に戻るまでにずぶ濡れなのに、新宿は地上も駅構内も人でいっぱいで、この雨なのにと驚いた。
その後世田谷区まで行く用事があり、さらに雨風が強くなり、それにもかかわらず小田急線の駅は傘をさして出入りする人で混んでいた。
雨の日に外に出るという発想が私にはあまりなかったが、濡れてもテンションが下がらない人がたくさんいるのか、それとも車社会ではない地域だということなのか、いろいろ違って興味深かった。
ちなみに、風雨の中でもわたしは道を間違えるので、人よりは余計に雨の中を歩く羽目にはなる。
<追記>
持ち帰るには分厚かった図録、この展覧会に関してはAmazonで扱うことになったと聴いて、夜のうちに注文したら、翌朝(今朝)には届いた。早くないか。
さっそく、宗次ホールへ行く前に半分ほど読んで、ますます藤田の人となりに、これまでとは異なる印象を持っている。
印象深い点として、その独自性の確率への苦しみと努力の部分がある。それと、展覧会では、女性関係が派手なのか意外だなと思いながら見た人物像だが、解説を読むと結婚や同棲は何度かしたけれど、いろいろ事情もあったからで、誠実な人に見える。子どもをなさず、親戚の子たちをかわいがったことも意外だ。